氷の華

嫉妬の炎を燃やす莉沙は、その事をすっかり忘れていたかのようで、思い出したと同時に視線を逸らした。


出ようとする杭も打つ。


自らも蘭の存在を危険と判断した莉沙が、牽制の意味を込めて行った行為は、柿沢から俺の耳に届いている。


経営者として、将来有望だと睨んだ人材に恩を売る形を取る事は、至極当然とも言える手段だ。


ナンバー１の莉沙も、自分の地位を脅かす存在になるかもしれないと感じ取ったのであれば、俺の行為は間違っていなかったと証明しているようなもの。


最後まで残していた一手は、莉沙を黙らすに十分すぎた。


自らの行為で急所を作っていたのだから、そうなるのも当然の結果といえる。


「俺のポケットマネーでそうしたのなら話しも変わるが、経営者として会社の資金を使ったんだ。尤も、出所は変わらないがな。」