氷の華
見ずとも、莉沙の嫉妬の炎が勢いを無くしていると分かる。


不毛な会話に漸く終止符が打たれたと、ロックグラスを傾けた。


中の氷が、マッカランの熱で丸みを見せている。


「経営者としては優秀かもしれないけど、最後の一言は女心を分かっていない証拠ね。今日はもう帰るわ。」


腕にかけていたストールを肩に掛け、莉沙はリビングを出て行った。


再び静寂が訪れたリビングに、気が休まる思いだった。


何時になれば、こんな煩わしい思いをしなくても良くなるのか…。


こういう関係は以前で懲りていたはずだが、あの時に莉沙を引き抜くにはこうするしかなかったのだと、もう一度自分に言い聞かせた。
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