氷の華
「蘭さん、三番テーブルで宮口様がご指名です。」


待機用のテーブルに現れた柿沢店長の姿に気付き、妙な勘ぐりは頭の中から捨て去った。


「私にですか?」


宮口さんと言えば、流亜さんの指名客の坂本さんの部下で、[ミルキィ]には昇進祝いとして連れてこられたと言っていた人だ。


あの時は確かに私が隣に付いたけど、今日は一人で来られたのだろうか。


「えぇ、迷う事無く蘭さんをご指名なされました。」


「そう…ですか。」


初めて指名されたけど、嬉しさよりも戸惑いが生まれていた。


そして、戸惑いが先に訪れた事に戸惑っている自分も居る。
< 206 / 270 >

この作品をシェア

pagetop