氷の華
三番テーブルに歩いていくと、そわそわしながら煙草を吸っている宮口さんの姿が見えた。


三十代後半といえば、氷藤社長と同じぐらいの年齢だけど、比べると宮口さんの方がグッと幼く見える。


その年代に知り合いは居ないけど、氷藤社長の雰囲気が異様だと言う事は分かる。


当然、親近感が沸くのは宮口さんの方。


「宮口さん、いらっしゃいませ。お隣失礼しますね。」


「この間来ただけなのに、名前覚えててくれたんだ。嬉しいな〜。」


面接も終わって採用と決まった時に、一度でも来店されたお客様の名前は、必ず覚えているようにと柿沢店長から言われていた。


それに、流亜さんの事もあったから、坂本さんと宮口さんの名前はしっかりと頭にインプットしてあった。
< 208 / 270 >

この作品をシェア

pagetop