氷の華
無論、それは煌々と光を放っていた訳ではない。


光としては脆弱で、薄布一枚被せただけで途絶えてしまうようなものだった。


だが今の蘭を見る限り、その光を放っていたものは何処にも見つからない。


その辺に居るキャストと比べても、遜色ない。


莉沙が笑みを浮かべている様子が、脳内のスクリーンに映し出された。


溜め息が漏れる所を我慢し、赤いパッケージからマルボロを引き抜く。


口にくわえると、蘭から差し出された火に穂先を翳したが、視線は火元よりも下を捕らえていた。


細身だがしっかりとした重みがある銀色のそれは、柿沢の物だ。
< 219 / 270 >

この作品をシェア

pagetop