氷の華
直ぐにライターを取り出せたのは、以前よりも進歩していると分かる。


「まるで造花だな。」


煙を宙に吐き出し、デスクチェアに身体を深く沈めた。


「どういう意味ですか?」


「まぁ造花でも良い。だが造花なら造花で、生花にも劣らない生彩を放つ造花になれ。」


今のままでは、役目を終えて処分されるだけの造花にも見劣りする。


「もう行って良い。」


笑顔の中に怪訝さを覗かせながらも、蘭は社長室から出て行った。
< 220 / 270 >

この作品をシェア

pagetop