氷の華
ノックの音に振り返り、鈴蘭の香りが消えた室内に意識を戻した。


「失礼します。」


窓とカーテンを閉め、デスクチェアに身体を戻す。


八本目のマルボロは、灰皿の中で完全に燃え尽きていた。


「本日のご報告ですが…。」


「今日の分の報告はもう良い。それより、柴山に付け回しをさせないで良いのか。」


蘭の入店以来の様子は、全て柿沢を通して聞いていたが、今日はその必要もない。


「現場を見ていた方が動かし易いですし、顔見せの順番も自由に出来ますから。」
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