氷の華
黒谷からの話しなら、[黒谷カンパニー]を潰した後で聞いても遅くはない。


どちらにしても、黒谷からの話しなど恨み言だろうからな。


乾燥した空気の中、灰皿に放置されたままのマルボロが、かさついた音を立てながら燃えていく。


「そうだな、出向いてくれる代わりに、あの女の所在を教えると言ったらどうする?」


直ぐ様言葉を発せず、喉の内壁に絡み付くような唾液を飲み下した。


だが、既に答えなら心中で決まっている。


「今更、そんなものに興味はない。」


通話を終了させ、気付けば握り締めていたコードレスホンを元の位置へと戻した。


どうやら、今日は昔の事を良く思い出す日らしい…。
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