氷の華
「社長、お早う御座います。」


「お疲れさまです。」


ホールの伊藤と柿沢から数秒ほど遅れ、マネージャーの柴山が顔を並べた。


「お、お早う御座います社長。」


最早、柴山にはマネージャー職すら務まらないか。


それが降格させられた事に対する不貞腐れから、やる気が削がれている事も分かっていたが、同情の余地は微塵も無い。


背後で開かれたドアの気配に、通路を譲ろうと身体を端に寄せたが、お客が入ってくる様子は無かった。


「お客様、いらっしゃいませ。」
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