氷の華
「伊藤は付け回し、柿沢はこの老人を社長室にお連れしろ。」


戸惑いの表情を見せたのは、伊藤ではなく柴山だった。


一目で同業と感じ取った事など、誉められる事でも無い。


長年この世界に居れば、出来て当たり前の事だ。


寧ろ、二人から見れば圧倒的に経験不足でも、違和感を感じ取った伊藤の方が買いだ。


こんな事は異例だが、伊藤が上手く付け回しを出来るか否かは、柿沢の指導が行き届いているかどうかを見るには打って付けと言えた。


「どうぞ、此方に。」


俺の後を、柿沢が黒谷を案内しながら社長室へと続いていく。
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