氷の華
柿沢を新店舗に回した後は、[fairyland]の神林を[ミルキィ]に引っ張る予定だったが、伊藤なら良いサポート役に成れるかもしれない。


考えが纏まった所で、社長室のソファへと腰を下ろした。


「わざわざお出で下さるほどの話しなら、余程良い話しなんでしょうね。」


俺と同じくソファへ腰を下ろした黒谷だが、琥珀色に見える杖は目の前で突いたままだ。


「悪い話しなら、昨日の電話で済ませば足りるだろう。」


黒谷が負けを認めるという考えも頭を過ぎったが、直ぐ様それを打ち消した。


この男に限って、そんな事は有り得るはずが無い。


「今までの事はお互い水に流し、もう一度私の所に戻ってくるつもりはないか。私亡き後は、お前がウチとソッチを束ねれば良い。どうだ、悪い話しでは無かっただろう。」
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