氷の華
第十二章…華
─まるで造花だな──


溜め息と一緒に漏れたような、氷藤社長の声。


家に帰っても、起きて出勤してからも、氷藤社長の言葉が頭から離れないでいた。


─まぁ造花でも良い。だが造花なら造花で、生花にも劣らない生彩を放つ造花になれ──


それは頭の中で蘇る度に色を無くし、温度を無くして私の心に突き刺さる。


接客の事を言われたのは分かっていた。


と言うか、それ以外で思い当たる節も無いのだから、当然と言えば当然だけど。


造花と生花。


比べるまでもなく、生花の方が見る者の心を動かすとは思う。
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