氷の華
二人供[ミルキィ]には良くいらっしゃるから、これからもバッティングする事があるかもしれない。


嘘に嘘を重ねると、嘘で塗り固めなくてはならなくなる。


だから、嘘は吐けなかった。


そして既に、偽りの自分を演じているからこそ、これ以上の嘘を吐きたくはなかった。


「ふ〜ん。」


特に気にした様子もない野田さんの返事に、胸をなで下ろしたい衝動を抑え、水割りを手渡した。


乾杯まで済ますと、テーブル上に停滞していたような空気は消え、会話が滞る事もなくなっていた。


野田さんは、その嫌らしい視線にさえ耐えられれば、悪い人じゃない事も分かってきた。
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