氷の華
嫌な顔一つせずにこう言って貰えると、本当に助かる。


しかも、ラストまで居てくれるとさえ言ってくれた。


今だけは、そのお洒落じゃない茶色のコーデュロイのパンツも格好良く見える。


気分良く野田さんのテーブルを離れられた私の目に、宮口さんのテーブルにヘルプで付いていた乃亜さんの姿が飛び込んできた。


良かった気分に罅が入り、その罅から不安な気配が入り込んでくる。


テーブルに近付いていくと、宮口さんが顔を顰めているのが分かる。


不安な気配は勢いを増し、広がりを見せるほど更に入り込んできた。


「乃亜さん、有り難う御座いました。」
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