氷の華
携帯を握り締める手が、硬くした唇が震える。


「乃亜さんにも…同じように迫ったんですか。」


「そうだよ。乃亜は自分の歳を気にして、[ミルキィ]に居辛くなってたからね。でもダメだね、やっぱり若い子の方が良いよ。」


目の前に居たら、その緩んだ頬に平手を打ち付けてやりたかった。


莉沙さんみたいに指名が取れないけど、乃亜さんも乃亜さんなりに頑張った。


文字通り、身体を張ってまで。


それなのに、電話の向こうで愉快そうな声を上げる野田は、乃亜さんから私に指名替えをした。


昨日の乃亜さんは許せないけど、私に向けられた怒りは分からなくもない。


あんな根も葉もない事を、宮口さんに吹き込んだのも…。
< 267 / 270 >

この作品をシェア

pagetop