氷の華
「もうお店に来て頂かなくて結構です。」


「こっちは高い金を払っ…。」


通話を終了させ、携帯を力なくパチンと二つに折った。


頬を流れる涙は、野田に対しての怒りじゃない。


乃亜さんに対しての同情心でもない。


この世界を知らずに飛び込んだ、自分の愚かさに対しての涙…。


透明な液体にマスカラが溶け、黒く色づけされて携帯と手に落ちる。


以前の私からは、透明な液体が流れていたはず。
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