氷の華
もう一度透明な液体を流すには、この世界を出るしかない。


それが、ママのお店をもう一度という夢を諦める事だとしても、これ以上は心が保ってくれそうもなかった。


「ママ…ごめんね。」


高校生の私と写る、ママの姿にそう呟いた。


出勤時間に迫る時計の針が、写真の中のママと語らいたい私を動かした。


今までは初めての世界に戸惑いを覚えていたけど、それじゃ何時まで経っても抜け出せない。


辛い道を一気に駆け抜けるには、涙を流している暇もない。


涙を流すのは、借金という鎖を断ち切ってからでも良い。
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