氷の華
だが、そんな柿沢の飢えた目つきに、俺は伸びる可能性を見ていた。


ホールの仕事を一から叩き込み、報酬として給与を渡し、住居として寮を貸し与えた。


ホール長、チーフマネージャー、マネージャーと、着実に力を付けてきた柿沢だったが、今の地位に昇るまでは十二年の時間を要した。


決して仕事の覚えが悪かった訳ではなく、寧ろ逆だ。


仕事は出来たが、柿沢はじっくり育てる予定だった。


じっくりと育て、飢えた目つきを、不要な熱を、柿沢から奪っていく予定だった。


そして、機は熟した。



じっくり育てる中で問題も起きたが、春先にオープン予定の店舗は、柿沢に任せても大丈夫だろう。
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