氷の華
「社長に会うの、怖いですか?」


固まったまま動き出さない私に、柿沢店長の顔が近付いてくる。


怖いと思うのは、数日前も一人のキャストを突然クビにしたって、ロッカールームの噂を聞いたからだった。


私にも、何時かその日が来るかもしれない。


だから怖いっていうのも有るけど、私とは住む世界が違う人って感じるんだよね。


氷藤社長は何店もお店を経営する成功者で、私は極々普通の家庭で育った人間。


それに、借金も有るし…。


「怖がらなくても大丈夫ですよ。確かに冷酷な判断を下す時も有りますけど、それで私達は給与をもらって暮らしていけるんですから。一本の花が病気になったら、それを取り除かないと花畑が全滅してしまうかもしれないでしょう?それと同じですよ。」
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