氷の華
黒い髪を全て後ろに流し、同じく黒のジャケットを羽織った氷藤社長。


ジャケットの中はV字の白いTシャツに、首元にはシンプルなコイン型のネックレストップが下がっている。


整った顔立ちながら、頬は薄目で痩せているように見える。


社長と聞かされていたから、有る程度年齢を重ねたおじさんかと思っていたけど、氷藤社長の外見は三十代前半に見えた。


そう言われても、信じ込むであろう自分もいる。


柿沢店長が老けて見える訳ではないけど、一緒に並べば兄弟という年齢差に見える。


ただ、何か一つだけ印象に残った物を挙げろと言われたら、私は迷わず瞳と答えるだろう。


体温さえも失ってしまったように感じる、見つめられれば身体の芯から凍り付いてしまうような、冷たい氷の瞳と…。
< 54 / 270 >

この作品をシェア

pagetop