氷の華
「今日から[ミルキィ]で働かせていただく蘭です。宜しくお願いします。」


明るい笑顔を意識していたけど、氷藤社長を前にすると、これが中々難しい。


見られているだけで、全身に氷の矢を放たれているように感じる。


挨拶と共に下げた頭を戻しても、氷藤社長は未だ動かなかった。


「社長、どうかしましたか?」


不思議に思った柿沢店長の声に、氷藤社長は右手に持っていた煙草を灰皿に押し付け、デスクの上で手を組んだ。


射るような氷の視線が、それまでより一層強くなったように感じる。


…まさか、クビ?
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