氷の華
眉間に寄せた皺を解いた氷藤社長は、いつの間にかさっきまでの無表情に戻っていた。


「八百万です。」


柿沢店長はデスクの脇に立ちつくしていて、こうして二人に並ばれると、自分が人形を相手に話している気分になる。


二体の、氷の人形。


「これは正直に答えろ。特定でも不特定でも、今現在で男は居るか?」


これはって…私は全部正直に答えてるっての!


柿沢店長のような人間味の無い人は居ないと思ってたけど、氷藤社長はそれ以上だ。


前言撤回。


私の前には、まだ一点だけ凍り付いてないように見える人形と、完全に凍り付いている人形の二体が並んでる。
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