氷の華
さっきと同じように、氷藤社長の背中に一礼して社長室を後にした。


社長室を出て立ち尽くすと、身体が強ばっているのが分かる。


緊張を吐き出すように深く息を吐き、社長室のドアに背中を凭れた。


目の前では、ホールスタッフの人達が息つく暇もなく働いてる。


まだお客さんが入っていない所を見ると、私が社長室に居たのは十分も無かったぐらいなんだろうな…。


軽く一時間はあの場に居たような気がするのは、氷藤社長の身体から発している威圧感の所為だ。


ただ冷たいだけかと思っていたけど、氷藤社長から発せられる言葉の裏には、従業員を思う深い意味が有るのだと知った。


それでも、柿沢店長以上に好きになれないと思う。
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