氷の華
顔見せだけで終わらせるつもりだった。


事実、昨日から新しく入った愛と恋は、顔を見ただけで終わらせた。


それが何故、蘭には無用な質問をしたのか…。


何度己に問うても、答えが見い出せるとは思えなかった。


室内に漂う蘭の残り香が、思考を狂わせていくようにも感じる。


ドアに背を向けていても、鼻先に届く鈴蘭の香り。


説明出来ない、理解出来ない、答えの出ない疑問は、脳内から追い払った。


考える時間が無駄だと、己に言い聞かせた。
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