氷の華
脳内で電卓を弾いている自分。


電卓を弾き、何かを納得させようとしている自分。


鼻先に届く鈴蘭の香りを、吐き出した紫煙で蹴散らした。


「そうだ。蘭の借金はウチで被る。」


表情には表さずとも、柿沢が納得していない事は分かっていた。


柿沢には経営のノウハウは教え込んでいても、商売の事は教えていない。


また、教えるつもりもない。


躓く訳にはいかない新店舗を任せるだけなのだから、経営のノウハウだけで事は足りる。
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