氷の華
問いには答えず、より温度を無くした目で柿沢を見据えた。


「すいません。」


深々と頭を下げた柿沢の姿を確認し、マルボロの穂先を灰皿に押し付けた。


「手配はこっちで済ませておく。仕事に戻れ。」

「はい。」


再び一礼してドアに向かった柿沢の背中を見て、デスクチェアから立ち上がった。


ブラインドを上げ、ネオンの映り込んだ窓を開けると、寒風に舞う粉雪が頬に張り付いた。


「柿沢、今月の[ミルキィ]のナンバー5は蘭だ。」
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