氷の華
だが、普通の人間なら借金を背負おうとする前に、遺産を放棄するのが普通だ。


そうしないには、八百万の負債を越える遺産がその先に有るか、もしくは感情に左右されたか…。


感情に左右されたのだとしたら、俺は愚かだとしか思わない。


視線を寒空から下げ、思考を止めた。


俺が蘭の借金の理由を考えた所で、何にもならない。


もう室内に鈴蘭の香りは無くなったと、換気の終わった窓を閉めた。


俺が蘭の事で考えるとすれば、八百万を越える利益を何時までに上げてくれるかどうかだ。


デスクチェアに身体を戻し、マルボロに火を付けた。
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