氷の華
「どうぞ。」


柿沢店長にそう言われて車のドアを開けられたけど、こんな事に慣れていなくて身体に変な力が籠もる。


車内に漂う、ほんの少しの煙草の匂い。


ふかふかと言うよりは、革が身体を包み暖かいシート。


外の風は冷たいけど、朝から元気の良い太陽の光は、心からポカポカした気分になる。


これが好きな人とのデートなら、最高な朝のスタートだ。


でも、隣には好きな人ではなく、無口な柿沢店長。


今は好きな人なんて居ないけど、オーディオさえ止められた車内には、ポカポカ陽気の太陽の光も届かないようで、空気が重く感じる。
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