氷の華
枯れ落ちた街路樹の葉。


寒風に晒されながらも、身を丸くして歩く人々。


自家用車、バイク便、引っ越し屋さんのトラック、商用車。


すれ違う車も様々。


重い空気に耐えきれず、逃げ場を窓の外に求めてみたけど、冬の寂しげな背景に行き場を失った。


「あの、この車って柿沢店長の車なんですか?」


「違います、社長の持ち物です。」


行き先を告げてくれないからと思って、なんとか捻り出した話題だったのに、時間にして五秒も持たなかった。
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