太陽に手を伸ばしても
プロローグ




蒸し暑くって汚くってほこりっぽい、いつもの部室に戻ると、そこにはそんな場所にぜんぜん馴染まないくらいこざっぱりとした、普段通りの千夏が待っていた。




「お疲れ様」


と言いながら渡してもらったタオルで、砂と汗まみれの首元をぎゅっ、とこすり取るようにふいた。

砂粒が肌にざらざらと残る。








「ごめん、今日も議会で間に合わなかった。

 最近いっつも途中からでごめんね」



と、千夏は少し困った顔を作ってはにかんだ。





忙しいのに来てくれてありがと、と言おうとした途端に千夏はまた後ろから入ってきた他の部員たちにタオルを渡しに行く。


僕に向けたのとおんなじ笑顔だ。






狭い部室の湿気がさらに上がってきた。
そんなむせかえる空間の中で、千夏はひときわ爽やかな笑顔を浮かべてはみんなに繰り返し声をかけていた。






「おいおーい、しっかりしろよ~、お前さっきから何してんだよ」



間の悪い僕を見ていたのか、茶化し気味に後ろから智己が図々しく肩を組んできた。





ちなみにこの智己は僕とバッテリーを組んでいるキャッチャーだ。


ついこの前まで大阪の高校にいた僕に、この高校を紹介してくれた、小4の頃からの大親友でもある。



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