太陽に手を伸ばしても









「陸が、今度こそ、千夏にコクりたがっているそうだ」




「あれ?智己くんさ、前もそんなこと言ってなかった??」



智己にすかさず噛みつく、かえで。




「てゆーかさ、陸、まだコクってなかったのかよー!!」




あまりにもおかしいとでも言うように、おおげさに驚いてみせる、涼。


だけど僕が一番気にしてしまったのは、何も言わない栗本さんの表情だった。






その気はあったのに、いろいろあったりして、実行に移せなかったんだよ。
だけど、栗本さんのおかげで決心がついたあの日のことはうそじゃない。


そんな風に心の中で言い訳しながらも、あらためてこの場に立ってみると、みんなの応援がありながらもどうしてここまで引っ張ってしまったんだろう、と自分が情けなく思えてくるから悲しい。






修学旅行、3日目にして最終日。


初日の大阪、2日目の広島を経て僕たちは朝一番に神戸にやってきた。



今日で最後。

僕は今日こそ千夏に想いを伝える。
今度こそは、本当にちゃんと逃げずに言う。


班別行動のどこかのタイミングで実行するのが、僕の考えだった。


ただ、それを何とはなしにさっきの新幹線で智己に話してしまったのが間違いだった。




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