太陽に手を伸ばしても
智己なら一緒にバンド組んだりしてくれるかな。
千夏はどうだろう。
ふとそんなことを考えた。
「智己さあ、一緒にバンドやらない?」
部活の帰り道、駅に向かう途中で智己に聞いてみた。
「は?バント??嫌だよ。なんなんだよ、なんでまたバントなんてさ。どーしてお前にそんなこと指図されなきゃいけないんだよ、まじで」
いい意味でも悪い意味でも野球バカの智己はバンドも送りバントの方の「バント」に聞こえるらしい。
「バンドだよ?バンド。文化祭の!」
「あぁいいよ」
なんか、ほんとに聞いてるのか聞いていないのかわからないような頼りない返事が返ってきた。
ほんとにいいのか聞こうとすると、
「千夏誘おうぜ」
と、智己が言った。
めっちゃ気がきくな、と思った。
「あと誰誘おうかな?みんなのこと全然知らないから」
「涼とかどう?お前あんまし知らないと思うけど、あいつドラムめっちゃ上手いからな」
「へー、そうなんだ。全然知らなかった」
「お前もうちょっと話せよ。いろんな奴と」
「話してないわけじゃないんだけどなあ」