太陽に手を伸ばしても




私は少し走った。


「行こ!」




でも、なぜか陸は一緒に走ろうとしてくれない。


そんな陸に気兼ねしながら、また少しだけ、私は走って、陸の方を振り返った。



陸は少し、遠くの方に立っていた。



「ねえ、急ごうよ」



「…あのさ」




「ん?」




「ごめん、急に呼び止めたりなんかして」



「じゃあさ、歩きながら話そうよ」



みんなが待ってるから。

だって、陸を迎えに行くように頼まれただけなんだから、私は。





だけど、私もほんとはこのままがよかった。

陸と、ずっと二人でいたかった。


言いたいことも言えなくて、付き合うこともできないんだから、せめていつもの幼なじみ、ってことで、他愛もない話でずっと笑いあっていたいんだ。


それしか私にはもうできないんだろうから。


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