太陽に手を伸ばしても



だけど、そんなことなんてできるはずがなかった。




だって。



陸は。



陸は、私のことを好き、って言ってくれた。

こんな私のことを。



なのに、なのに、私はこのまま陸に好きって伝えないままで、いいんだろうか。







でも、このままでもいいのかもしれない。


私、今、陸に好きって言ってもらえて、本当に嬉しかった。
初めて好きになった、今も大好きな陸に好きなんて言ってもらえて、本当に幸せだった。

それだけでいいんじゃないかって。





駅前の人ごみの雑踏のなか、
私は後ろに陸の優しい気配を感じながら
一歩一歩、地面を強く踏みしめるように歩いていた。




後ろからまた陸の声が聞こえる。


「なんか、ごめん。本当に今言ったこと気にしなくていいから」










『ううん、私も陸のこと好きだよ!!!』








言ってから陸と目が合ってはっとした。
思わず口をおさえる。

 



私、、言っちゃった。





言わないって決めてたのに。
絶対に言わない、って決めてたのに。

さっきまでずっと、そう思ってたのに。



気づけば私も陸も、足を止めて向き合っていた。

行き交う人たちは私たちを避けるように歩いて、ここだけの空間の時間を止めているみたいだった。





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