太陽に手を伸ばしても
「あっ…違っ、今のは、いや、その…」
私は思わず目をそらす。
「え...今の、本当?!まじで!?!?」
陸の声は、まだうわずっていた。
「.....だとしたら、すごく、嬉しい」
恐る恐る下げていた視線を陸の方に移すと、反対に陸は斜め下に視線を落として、少し恥ずかしそうにしていた。
「陸」
「....」
「陸、私ね、陸のこと好きなんだよ。本当に。だけどね、言わないつもりだったんだ。言っても絶対に信じてもらえないと思って」
しゃべっているうちに鼻の奥がつん、として目頭が熱くなる。
持っていた智己の携帯を思わずぎゅっ、と握りしめる。
「だからね、もうずっと心に閉まっておこうって思ってたの。誰にも気づかれないように。でもね、バレてたみたいなんだよね。智己に」
気づいたら私の声は鼻声になっていた。
「ずっとね、誰にも気づかれずに終わると思ってた。だけど、智己がね、告ってこい、ってさっき言ってきた。でも、私はそんな気なかったんだ。だって、陸にはずっと頼斗の話ばっかりしてたから、急にそんなこと信じてもらえないと思って。
信じてもらえないなら、ずっと話さないほうがいいと思ってたんだ」
「陸、ごめんね。今まで、ずっと。こんな私のこと、好きって言ってくれて、ありがとう。私、陸がこんなこと言ってくれるなんて、思ってもみなかった」
陸が泣いていた。
優しい笑みを浮かべながら大粒の涙を流す陸は、弱っちくって、頼りなさげで、なのにどこか強くて可笑しくて、小学生のころと何も変わっていなかった。
気づけば私のまぶたも熱くなってきて、一瞬で視界がじわっとぼやけて、大粒の涙が次々と頬を伝い落ちた。
でも、やっと言えた。もうずっと言えないと思ってきたことが、今、やっと言えたんだ。
もし今言えなかったら、小学生の時の気持ちまでまとめてどこかに捨て去ってしまうところだった。
そう思うと、ますます涙はこぼれてくるし、だけどここは駅前の人ごみの中だし、嬉しいやら恥ずかしいやらでもうどうしていいかわからなくて、ただただずっと泣きじゃくっていた。
やっと、言えた。
もうずっと言えないと思ってきたことが、今、やっと言えたんだ。