太陽に手を伸ばしても




「…え?」



いや、歌は自信ないしな、カラオケとか嫌いじゃないけど、そんな大勢の前で歌うのはちょっとなぁ…

頭の中にいろいろな思いが駆け巡って困ってると、飲み干したコップの底に残った氷を丸飲みした智己がまた、


 「冷てっ!」

と叫んだ。





「んじゃあ、やるわ、ハモり」

気づいたら、僕はなぜかそう言っていた。



「マジで!?よかったあ!いーじゃーん最高!!」


提案者でもないのに中井さんは大はしゃぎだ。



「…ありがとう!」


栗本さんも横で嬉しそうに、控えめに笑っていた。

誰のことも妨げない、優しい笑顔。




そういえば昔の千夏もこんなふうだった。

みんなでワイワイ話しているとき、目立ちたがるわけでもなく、かといって別にノリが悪いわけでもなく、控えめに、嬉しそうに、いつも笑っていた。

いつもそうだった。

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