太陽に手を伸ばしても
…そうだ。
違う。全然違う。
僕は思った。
そう、結局、今の千夏は僕が好きになった時の千夏とは全然違うのだ。
なのに今でもずっと好きなのは、どうしてなんだろう。
あのとき僕が好きだと思った千夏なんて、パッとみたところもうどこにも残っていない。
クラスの話し合いの時の、どこまでもみんなを引っ張っていけそうなあの明るさやパワーなんて、小学生の頃の千夏のどこにあったんだろう。
ふと、意識が現実に戻された。
気づくと、手にも腕にもお皿を乗せた店員さんがやってきて、美味しそうな料理たちが僕たちの前に並べられていた。
要領のいい中井さんが、フォークをみんなに手際よく回している。
僕もフォークを受けとると、
「じゃあ、食べるか!」
と智己がまたいつもの調子で妙に景気よく言い、それとほぼ同時くらいにみんなのいただきまーす、の声が響いた。
「あっまだ曲決めてねえじゃんかー!」
叫ぶ智己に笑うみんな。
美味しそうにそれぞれの料理をほおばっている4人を見て、僕も負けじと切り分けたピザにかぶりついた。