太陽に手を伸ばしても
短い反省会を済ませて、僕たち野球部員はだらだらと部室を後にした。僕と智己もエナメルバッグを持って部屋を出た。
マネージャーの千夏はたぶんもう少しここに残るのだろう。
マネージャーはいつも何かと忙しく頑張ってくれてる、から。
学校を出ると、外はもう夕暮れだった。
薄暗くなった空を照らす街灯には小さな虫が集まっていた。
風の気持ちいい下り坂を智己と二人で下る。
「どうだよ?どうなんだよ??」
「何がだよ」
唐突な智己の質問に、一瞬、何のことを聞かれているのかわからなくなる。
「千夏のことだよ。お前、全然進展ないじゃんかよ」
「あー、てゆーか、むしろ退化してるかもな、、まあいいよ」
智己の質問が何のことを言っているのかわかった瞬間、できるだけ冷静に、急いでこの話を終わらせた。
あーあ、悔しいな、一度くらいは
「うまくいきそうになってきた」 とか
「実はちょっといい感じなんだよな」
とか言ってみたいのに。
僕はやるせない気持ちで、星の光り始めた空を見上げた。
昔だったら、こんなじゃなかったのにな。