太陽に手を伸ばしても




「今度の文化祭の後にね、体育祭があるんだけど、」


「うん」


「私と頼斗で新しい競技の案を出さなきゃいけなくて。いろいろ考えてみたんだけど、ありきたりなのばっかで全然いいの思いつかないから、陸にも意見聞いてみよっかな、って」



「…意見?」


「そう。前の高校でこんなことやって盛り上がった、とか…」




大阪だと体育祭でも笑うところあったりするのかな、と、千夏は一人でつぶやいてふふふ、と空に向かって笑った。

千夏の向こうの方に一番星らしきものが光っててすごく眩しかった。






「じゃあさ、借り物競争とかはどう?」


ごめん、全然気のきいた案が浮かばないや。
僕はこういうときに限ってうまくいかないのだ。
千夏に心の中で謝ってみる。





「…借り物競争!?」

「…うん」



「……いいかも、てゆーか、めっちゃいいよ、それ!」



「まじで?!」



「私、なんだかんだ言って一度もやったことないからさ、借り物競争」


「あ、そうなの?じゃあそれにしなよ」


「うん!!なんか笑いもとれそうだし、採用!!てゆーか、ありがと!!」




千夏が跳ね上がるような明るい声で、嬉しそうに言った。
なにはともあれ、喜んでもらえたみたいでよかった。



バンド入りたい!って話ではなかったけれど。



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