太陽に手を伸ばしても
「あのさ、私、」
「うん」
「あのさ、私、頼斗に告白しようと思うんだ。今度」
「文化祭終わったら、告白しようと思うの」
…当たった。僕の予想通り。
しかももはや相談でもない。
「そっか。頑張れよ」
僕は心を絞り出して言った。
そしてそれ以上何も言えなかった。
僕の本心を隠せるような、今この流れにふさわしい言葉が、何も、浮かんでこなかった。
「もしOKだったら陸に一番に報告するから!」
千夏は笑っていた。
僕も、笑っていた。
千夏は期待に胸を躍らせて。
僕は、悲しさに押しつぶされまいと必死に抵抗するつもりで。
暗い夜道の向こうの方に、地下鉄の昇降口が見えてきていた。
昇降口から漏れる光が、いつもよりぼうっと弱く、滲んで見えた。