太陽に手を伸ばしても



「中井さん、」

呼び掛けた僕に、あっ私のことはかえででいいよ、と前置きしたうえで、

「いいよ、協力する!任せて」

と自信満々に言った。



「じゃあ、曲終わった後に実行だな」

涼がさらりと言った。


この企画はもうすでに決定のようだ。
僕は天井の角を見つめた。




*****




僕を除いた4人の盛り上がりがひと段落ついたところで、僕と栗本さんはサビのハモり部分の確認だけしようとスタジオの外に出た。


スタジオはそれぞれの楽器の音がうるさくて、声がよく聞こえなかったのだ。





「陸くん」

個室のドアを閉めたところで、栗本さんに声をかけられた。



「ん?」


「陸くんが好きな人って、千夏ちゃんでしょう?」



「…そう、だけど」

どこに焦点をあわせていいかわからなくなった僕は仕方なく下を向いた。




「やっぱり!」

栗本さんはそう言って微笑んだ。


「見てたら、わかる」

えっ、何それ。
僕は恥ずかしくなった。


「…応援するよ、私も。陸くん、千夏ちゃんがいかにも頼斗くん一筋、って感じだから言いにくかったんでしょ??」



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