太陽に手を伸ばしても




「まぁ、そんな感じ」


どうしてこんなに見抜かれてしまったんだろう。
そんな細かいとこまで顔にでるんだろうか。



「大変だよねぇ」

楽譜をペラペラめくりながら、でも顔は空中を見つめたまま、栗本さんはつぶやいた。

僕はというと、あいかわらずどうしていいかわからないまま、栗本さんの持つ楽譜をぼんやりと見ていた。





「告白しちゃいなよ。
 たとえ叶わなくても」



…たとえ叶わなくても、か。



「叶わなくたっていいじゃん、陸くんが千夏ちゃんのことを好きって気持ちは変わらないんだから。言わないよりもとりあえず伝えてみたらいいんじゃない??」


ごめん、なんか語っちゃった、と栗本さんは少し恥ずかしそうに髪を耳にかけた。



「そんなことないよ、なんか、ありがとう」



「また何かあったら話聞かせてね、なんでも聞くから」


じゃ、練習始めよっか、と栗本さんは言った。

僕は栗本さんに言われた通りページを開いた。
家で練習したとき何度も開いたページは、いちいち探さなくても、ぱっ、と開いた。



そっか。それもありかもしれないな。

叶わなくても伝えてみよう、そう思えたのはきっと栗本さんのおかげだ。




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