太陽に手を伸ばしても





「おーい、もう一回セリフ合わせやるぞ~」


…え、またか。

みんなはさっきからずっと僕の"告白作戦"を成功させるべく、何度も何度も「リハーサル」を繰り返してくれていた。
最近はどちらかというと演奏の練習よりもこっちの方が多いくらいだ。





「もういいわ、お前、とりあえず千夏の方ちゃんと見て言え、そんだけでいいわ」


僕があまりにも黙っていたからか、見かねた智己が半分呆れたように言った。


「いーじゃん、どうせダメ元で言うんだしさ!最初から、うまくいくつもりなんてさらさらないんでしょ??」



かえでが僕の背中をバンっ、と叩く。
痛てっ!意外とだいぶ痛い。





確かに、最初からうまくいくつもりなんてさらさらない。

その通りだ。
その通りなんだよ。でも。






「そろそろ出番でーす」

流れ作業みたいな、だれた声が聞こえる。
僕たちを呼ぶのは実行委員の人だ。

ついに来てしまった。
一気に心拍数が上がる。





「っしゃーーっ!」

智己がいつもに増して景気よく叫んだ。
満面の笑顔だ。
僕はどうしてもこのテンションについていけない。


暗い舞台裏の幕のあいだから、びっくりするくらいに眩しいステージが見えた。

今からあそこで歌うんだ。


ざわつく気持ちをしずめようと深呼吸しているとき、栗本さんと目が合った。

栗本さんは、がんばれ、と口だけ動かして、小さくガッツポーズした。
昔の千夏みたいなそぶりだ。







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