太陽に手を伸ばしても
少しのウォーミングアップのあと、試合が始まった。
一回の表は僕たちからの攻撃。
一番さいしょはナス志の打席だ。
「な、なんか…緊張するな!!」
笑いながらナス志が言った。
「お前絶対緊張してないだろー!」
「してるし!智己も肩の力抜けよ~」
「いちいちうるさいな、ナス志、ちゃんと打ってこいよ」
「行ってまいりまーす」
ナス志はバットを振り回しながらバッターボックスに立った。
相手チームの先発ピッチャーは、この前まで大阪にいた僕でも知ってるような有名選手だ。
この前読んだ雑誌にも載ってたような気がする。
ナス志のバットが空を切る。
「…ストライク!!!」
ナス志は悔しそうに、顔を歪めた。
「バッター、アウト!」
ナス志が力のない笑顔を浮かべてこっちを見ながら戻ってきた。
「まじやばいな…向こうのピッチャー、どう頑張っても当たる気がしないわ。ボール見えないもん」
ナス志がそう言うあいだにも、早速二人がアウトになっていた。
攻守交代。