太陽に手を伸ばしても






 


昨日の夕方、千夏に一体何があったんだろう?



頭が真っ白になっていく。

そんな僕に追い討ちをかけるかのように、僕の投げたボールはバッターによって大きく打ち返された。



視界をものすごい勢いではるかに越えていく白球を、急いで僕は目で追いかける。

白い球はずっと向こうの茂みの方に消えていった。



ホームランだ……!

しかもまだたったの1球目で。


こんなに大変なことが起きているのに、千夏のことを相変わらず気にしてしまう自分の頭が情けなかった。




泣いてたみたいだった。千夏が。

ひょっとして、フラれた?

そんな考えが一瞬、頭をよぎった。

いや、でも、まさか。
 


確かに、もしうまくいってたんだとしたら、いつもみたいに高っかいテンションで僕に報告してくるはずだ。
いくら僕が話しかけられないように頑張ったとしても。



だけど、頼斗とはあんなに仲も良さそうだったし、てゆーか、正直かなりいい感じだったし。
正直、千夏がフラれる理由なんて、僕からしたらまったく思いつかない。


頼斗だってそうだ。
自分が立候補するついでに千夏を生徒会役員に推薦しちゃう、なんてことしたじゃないか?



やっぱり、千夏が頼斗にフラれるわけがない。

…だけど、今、千夏は、、。

うわーっ、一度に考えることが多すぎて、頭の中がごちゃごちゃしてきた。



「…く!」


……??


「陸!話聞けよ、おい陸!!」


声が後ろから近づいてくる。

ふと我に帰ると、僕はホームランボールの軌跡を追ったきり、キャッチャーの智己に背を向けたままだったのだ。



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