太陽に手を伸ばしても
2
昨日の夕方、千夏に一体何があったんだろう?
頭が真っ白になっていく。
そんな僕に追い討ちをかけるかのように、僕の投げたボールはバッターによって大きく打ち返された。
視界をものすごい勢いではるかに越えていく白球を、急いで僕は目で追いかける。
白い球はずっと向こうの茂みの方に消えていった。
ホームランだ……!
しかもまだたったの1球目で。
こんなに大変なことが起きているのに、千夏のことを相変わらず気にしてしまう自分の頭が情けなかった。
泣いてたみたいだった。千夏が。
ひょっとして、フラれた?
そんな考えが一瞬、頭をよぎった。
いや、でも、まさか。
確かに、もしうまくいってたんだとしたら、いつもみたいに高っかいテンションで僕に報告してくるはずだ。
いくら僕が話しかけられないように頑張ったとしても。
だけど、頼斗とはあんなに仲も良さそうだったし、てゆーか、正直かなりいい感じだったし。
正直、千夏がフラれる理由なんて、僕からしたらまったく思いつかない。
頼斗だってそうだ。
自分が立候補するついでに千夏を生徒会役員に推薦しちゃう、なんてことしたじゃないか?
やっぱり、千夏が頼斗にフラれるわけがない。
…だけど、今、千夏は、、。
うわーっ、一度に考えることが多すぎて、頭の中がごちゃごちゃしてきた。
「…く!」
……??
「陸!話聞けよ、おい陸!!」
声が後ろから近づいてくる。
ふと我に帰ると、僕はホームランボールの軌跡を追ったきり、キャッチャーの智己に背を向けたままだったのだ。