太陽に手を伸ばしても
「途中参加」
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僕の人生はたいていいつも途中参加だ。
親の仕事の関係で、小3の時に1回、中学入る前にもう1回、そして今回、高校2年生でまた1回。
転校ばかり繰り返している。
何がしんどいって、僕が「途中参加」するタイミングはたいていの場合がもうすでに人間関係とか全部でき上がった後なんだ。
だから僕は毎回そこに、
「すみません、ちょっと入れてください」みたいな感じで入っていくことになる。
そこにもともといた人たちとは明らかに違う、弱気な姿勢。
これが毎回すごく嫌だった。
でも、今回の「途中参加」はちょっと違う。
今回、僕が引っ越してきたのは、小学生のうち半分くらいの時期を過ごした街、名古屋。
前いたところに戻ってきただけだから、言葉の違いにも悩まないで済むし、街の空気も知っている。
これだけのことだけど、僕にとってはすごく大きかった。
しかも、この高校には小学生の時のクラスメイトが二人もいる。
ひとりは、野球仲間の岡田智己。
僕にこの学校を紹介してくれた、大親友だ。
そして、初恋の相手、青山千夏。
恥ずかしいけど、この人のせいでひとつ前の学校では好きな人なんて全然できなかった。
もっと恥ずかしいことを言うと、ちょっと両思いだった時もあった、んじゃないかな。
そんな二人がいる、新しいクラス。
また智己と野球やって、千夏ともたくさん話して、あの時の続きみたいな毎日が始まるんだって、最初は信じて疑わなかった。
あんなことが起きるまでは。