太陽に手を伸ばしても
朝のSTがひととおり済んだ後、こっちに気づいた智己が僕を手招きした。
僕は急いで席を立つ。
「何だよ」
「頼斗さ、」
僕に抑えた声でそう切り出した智己が頼斗の方へ視線を移すと、頼斗は
「俺、彼女いるんだ」
と言った。
その言い方があまりにもさっぱりしていて、僕はなんか拍子抜けしてしまった。
そうだったのか、と驚いたような、逆に妙に納得したような気分だった。
確かに、彼女なんていたら千夏のこと普通に振るしかないし、そもそも初めから恋愛対象にすらならない。
「あー、なるほど…」
でも、感心する僕のことなんて全く気にせず、智己はその彼女のほうに興味が行っているようだった。
「どーゆー関係?」
「中学校の時の同級生」
「なんだ、俺の知らない人か。いつから?」
「中2の夏から」
「かわいい?」
「…まあまあ、な。…けっこうかわいい」
根掘り葉掘り聞き出す智己、意外とためらうことなくサクサクと答える頼斗。
僕はそんな二人のやり取りには入らず、ただただ一人で納得するばかりだった。