太陽に手を伸ばしても







今日もよく晴れた朝だ。

校舎からぞろぞろと、たくさんの人たちがそれぞれ自分の椅子を引きずりながら運動場へと出てくる。

一人一人の名前が入ったクラスTシャツにおそろいのズボン、クラスカラーのタオルを肩にかけているから運動場はいろんな色でごった返していた。



そう。
今日は、体育祭の日。



千夏の失恋が発覚してから、まだかれこれ1日しかたっていない。

だけど、もう昨日みたいな心のざわつきはすっかり無くなっていた。




「はやく定位置ついてくださーー!!い!!」

運動場の向こうの方から、ナス志らしきバカでかい声が聞こえる。

生徒会のナス志は今日もやる気満々だ。
  



椅子を定位置に置いたら、運動場の真ん中に集まって開会式の始まりだ。

僕たちの前に広がるのは人の列、そのさらに前のほうには白いテントと朝礼台。

その朝礼台に生徒会長である頼斗が登ってくる。



頼斗はいつも堂々としていた。

僕が引っ越してきたばかりの時、僕を知らなかった人の中で一番はじめに声をかけてきたのも頼斗だった。

自分のことで精いっぱいにならないで、いつも周りを気遣える頼斗。

自分よりみんなの利益を優先してものごとを考えられる頼斗。

そんな頼斗のすごさには、クラスの男子や、顔の良さにときめいている女子や引っ越してきたばかりの僕ですらも気づいていた。


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