太陽に手を伸ばしても



そう、頼斗は好きだからとか、付き合いたいからとかいう理由で千夏と一緒に仕事をするために生徒会役員に推薦したりするような人じゃない。

そんなに自己中心的な考えなんて最初から持っていないのだ。

それに比べて、僕はなんて浅はかな考えだったんだろう。

クラスの女子の中からたまたま選んだだけの千夏を好きなんだろう、だなんて。



頼斗の開会宣言が終わると、僕たちは定位置に戻り、体育祭が始まった。




「ナス志、出るらしーよ」

隣で見ていた智己がトラックの方を指差す。

その指の先を見ると、ナス志がスタートラインでぴょんぴょん跳び跳ねたり、大きく体を反らせたりと、大げさにウォーミングアップしている。

 
「よーい、ドン!!!」

千夏の声だ!!

スタートラインの横で千夏はピストルを手に高く上げた腕を下ろすところだった。

そのまま、白いテントの下にいる頼斗の方に走っていく。


「ナス志ー!頑張れーー!」

叫ぶ智己を横目に、千夏を目で追う。

千夏は、頼斗とアイコンタクトしながら、持っていたさっきのピストルを手渡している。




息の合った仕事仲間。
そんな印象だった。


僕は頼斗みたいに雑念のない、真っ直ぐで、人のためだけに行動できるような人間に、いつになったらなれるのだろう。
  
幼なじみの千夏に思いを伝えることすらなかなかできない、こんな僕じゃいつまでたっても勝つことなんてできない。




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