太陽に手を伸ばしても
「よっしゃー!ナス志ー!!やったぞーー!!」
智己の声で意識が現実に戻される。
ナス志は断トツ一位でゴールしたようで、ゴールテープをつかんだままその場で跳び跳ねていた。
「よし、お前リレーで一位取ったらコクれ」
「え」
…またかよ。
びっくりして智己の方を見ると、智己は運動場の方を向いたままで、こっちを向こうとしない。
でも口角がいつもよりも明らかに上がっていて、ニヤついているのがわかった。
「なんでそんなにコクらせようとしてくるんだよ」
そう僕が聞くと、智己は僕の背中を叩いてきた。
「弱いんだよ、陸は!だからさ、こーゆーイベントん時に勢いでいかないと駄目なんだよ!」
「…考えとく」
「あー、絶対コクらんやつだわ、これ」
「いーじゃんか、別に今度でも、な?」
「そうかなあ、早いほうがいいと思うんだけどな、俺は」
智己は少し笑みを浮かべたまま、気だるそうに伸びをする。
この後どんなことが僕に起きるのか、僕も智己もまだ全然知らなかったのだった。